一年間を24に等分して、それぞれに季節の名前をつけたものを「二十四節気」といいます。二十四節気の14番目の季節が「処暑」です。
ネット上に、二十四節気について記したサイトはあふれていますが、その深い意味を分析したサイトは見当たりませんでした。
そこで、このサイトの二十四節気の記事では、西洋占星学・十二支・陰陽五行・八卦などの視点から分析し、二十四節気を成長に活かすための方法についての考察を記しています。
1 めっちゃ注意深く現実を観察する
2 言葉と感情の表現力に磨きをかける
3 実務能力をとことん発揮する
ざっくり知りたい方のための一般的な「処暑」の意味・行事・食物など
2019年の処暑はいつ?
2019年の処暑は、8月23日(金)から9月7日(土)です。
処暑の一般的な意味とは?
陽気とどまりて、初めて退きやまむとすれば也(こよみ便覧)
処暑は、暑さがやわらいでくる頃です。
「処」という漢字には「段取りをつけて物事を終わらせる」「止まる」「ケリをつける」などの意味があります。つまり、処暑とは暑さを終わらせる時期ということです。
朝夜は気温が下がり、エアコンなしでも過ごせるようになる頃です。蝉の鳴き声もぐっと少なくなり、虫の羽音に秋を感じます。
気温は暑くても、季節は秋です。体を冷やすものを取りすぎると逆に体力を消耗し、秋に疲労を残します。秋の疲労は冬に悪化しますので、そうならないようにこの時期から養生を始めていきましょう。
処暑の初候・次候・末候は?
ひとつの節気を約5日ずつ3つにわけたものを初候・次候・末候と呼びます。二十四節気×3で、これをまとめて七十二候と呼びます。
● 第40候【処暑の初侯】… わたのはなしべひらく(綿柎開)
● 第41候【処暑の次候】… てんちはじめてさむし(天地始粛)
● 第42候【処暑の末候】… こくものすなわちみのる(禾乃登)
【初候】わたのはなしべひらく(綿柎開)
綿花の萼がひらき、中からふわふわのコットンが顔を出す頃です。これが綿糸になり、服や布になることを想像すると、なんともいえない趣があります。
ちなみに綿は江戸時代から国内で栽培が始まったそうですが、いまは国内自給率がほぼ0%です。
【次候】てんちはじめてさむし(天地始粛)
秋に向けて気候が動き始めるころです。まだ日中は暑いですが、涼しげな風に季節の変化を感じます。秋雨前線がおとずれ、夏の気配もおさまってきます。
【末候】こくものすなわちみのる(禾乃登)
禾は稲・麦・粟などの穀物を意味する言葉です。いろいろな穀物が実り始めるころです。とはいえ、この時期は台風が襲来する時期でもあります。
映像で感じる処暑
二十四節気を成長に活かすために、ちょっと深く「処暑」を考察してみます
次に、二十四節気を成長に活かすために、「処暑」の意味を深く考察してみます。
1. 西洋占星学から深める「処暑(乙女座の前半)」の意味とは?
処暑は、十二星座の「乙女座の前半」に対応しています。
獅子座までのプロセスで個人の「主観」はひとまず完成しました。次の乙女座では「他者」の存在に出会います。他者とは、自分と別の「主観」をもった対象です。
乙女座は分析の星座と呼ばれます。それは対象を詳しく観察し、分析します。具体的に、詳細に、対象について語ることができます。
「他者」を意識することで、私たちは自分が「社会」に属していることを実感します。社会に属するということは、なんらかの義務や責任を負うということです。
乙女座は、自分が負っている義務や責任について誠実に向き合います。そして、その「仕事」にきっちりと取り組みます。このように私たちは仕事を通して社会とつながっています。
乙女座はまた自己訓練の星座とも呼ばれます。それは仕事を通して自らの主観的なあり方を変化させるからです。それは他者の集団である社会のなかに本格的に飛び込むために、自らの主観的な意識を浄化するプロセスです。肥大する自我の火を鎮火する働きがあります。
乙女座の前半では、識別力という知性を働かせて、内省し、自分自身を調整します。好き勝手に行動する獅子座の衝動を適切に処理し、社会にとって有益で価値のある自分になろうとします。乙女座が求めるのは「人間としてのあるべき理想の姿」です。
処暑とは夏の暑さを処す時期です。
「暑さ」を「処する」という言葉通り、燃え上がった主観的な自我の火を、現実的な観察や分析にもとづいて調整するのが処暑です。
獅子座では、ひたすらに自己の意志に従い、はみだして生きることに価値を感じていましたが、乙女座からは、社会や他者にとって有益な自分であることが重要になります。
誰かの役に立つ自分であってこそ意味があると感じます。これが処暑の気分です。
(1)対象を具体的に観察して分析する
(2)人間のあるべき姿を描き、求める
(3)働くことを通じて自分を訓練する
2. サビアン占星術から深める「処暑(乙女座1〜15度)」の意味とは?
ここではサビアン占星術における5度ごとの意味から処暑を考察してみます。
サビアン占星術では、各星座が30度にわけられており、その5度ごとにテーマがあります。これは二十四節気が約5日ごとにわけられているのに対応しています。
● 乙女座の第一グループ = 処暑の初侯「わたのはなしべひらく」
● 乙女座の第二グループ = 処暑の次侯「てんちはじめてさむし」
● 乙女座の第三グループ = 処暑の末侯「こくものすなわちみのる」
現実的に観察する視点を手に入れることがテーマ
第一グループは処暑の初候(わたのはなしべひらく)に対応しています。
このグループでは、外界の対象への観察力を発達させます。
乙女座は、獅子座で増幅させた主観性への反動で、今度は自分自身を外側から眺めていこうとします。
目の前の現象を合理的に、客観的に見ようと努めます。夢見がちな獅子座と違い、具体的に細かく物事を観察していこうとします。結果的に全体を見る視点が失われる傾向はあります。また、判断基準を常識や公共性にゆだねることで、自分の考えや感じ方を抑圧する傾向もあります。
処暑の初候は「わたのはなしべひらく」です。
綿花のがくが開き、中から綿が顔を出してきます。主観に閉じこもっていた状態から、外界に顔を出す最初の一歩です。
乙女座は外界の要求にあわせて自己訓練する星座です。その一歩目として、外の世界をよく観察し、分類したり分析する知性で理解しようとします。
綿花も同様です。顔を出すのは外の世界を見る最初のステップです。
この後、綿花は外界の要求にあわせて、綿糸になり、コットンとして様々な用途に転用されていきます。これは自らの分をわきまえながら、他者の役に立つ自分にしていくことが乙女座のテーマと呼応しています。
現実に適応する力を育成することがテーマ
第二グループは処暑の次候(てんちはじめてさむし)に対応しています。
前のグループにおいては、現実を観察する力を育みました。第二グループでは、個人の領域で言葉や感情の表現方法を広げます。
前のグループを通して、自分の衝動や想いではなく、現実的に対象を観察して理解する力を成長させました。
第二グループでは、そのエネルギーをどのように活用することができるかを色々と模索し、試行錯誤します。これは社会に対しては大きな意味をもたず、個人的な世界における営みですが、この試行錯誤を通して、自分自身を現実社会に適応させていくための力を養います。
処暑の次候は「てんちはじめてさむし」です。
夏の暑さが静まり、収まってくる頃です。それはすなわち獅子座の主観的な熱気が、現実的な観察を通して冷まされてきたということです。
いまは人生の使命だとかクリエイティビティなどは関心の的ではありません。いまは自分さえも客観的に観察しつつ、自分の力はこの現実世界のなかでどんな風に活用できるのだろうかと模索する時期です。
整理整頓して管理する力を活かすことがテーマ
第三グループは処暑の末候(こくものすなわちみのる)に対応しています。
第一グループで対象への注意力を育成し、第二グループでそれをもとに知性や表現力を養い、第三グループではそれらをもとに実務能力を高めます。
第三グループは、現実的な対処能力・実務能力を存分に発揮して活動することがテーマになります。
乙女座前半では、無意識や未知の領域ではなく、具体的で現実に認識できる領域に意識を集中させてきました。その結果として、この現実における実務能力が発達します。物事を整理整頓して管理し、適切に配置し、パワフルに活動するのが第三グループです。
処暑の末候は「こくものすなわちみのる」です。
様々な穀物が実る時期です。穀物は人間の滋養です。農家さんが汗をかいてたくさんの穀物を実らせるように、言葉や感情を駆使しながら実務的な仕事を実らせることが第三グループのテーマです。
初候 外側を注意深く観察する
次候 言葉や感情の表現方法をたくさん試す
末候 実務的な能力をめいっぱい発揮する
3. 十二支・陰陽五行・八卦から深める「処暑」の意味とは?
立秋に対応する十二支、陰陽五行、八卦はこちらです。
● 十二支・・・「申」
● 陰陽五行・・「金(こん)」
● 八卦・・・・「坤(こん)」
申(猿)は、果実が成熟してかたくなっていく状態を意味しています。
申は獅子座の後半と乙女座の前半に対応しています。
「申」という漢字は「天の神」を意味する言葉です。また「申しあげる」「伸びる」などの意味もあります。
獅子座の後半で、低い自己が克服され高い自己へとたどり着きました。そして、乙女座ではその経験をふまえて「個」としての成長を完成させるプロセスに入ります。
この高い自己が、自分自身にとっての「天の神」といえる存在です。獅子座にはそこに向かって「伸びる」プロセスがあり、乙女座には伸びたものを社会的に適当なかたちに整形していくプロセスがあります。
「金」は新陳代謝によって生命を純粋に保つエネルギーを象徴しています。
「金」は秋という季節に対応しています。二十四節気では、立秋・処暑・白露・秋分です。
「金」は鉱物を象徴しています。大地のエネルギーが固まってできたのが鉱物です。それは大地が凝縮した結晶です。「金」の時期は、星座では獅子座の後半〜乙女座〜天秤座の前半です。この期間は「個」としての自分を完成させる段階に対応しています。まさに大地が鉱物というかたちを生み出すように、個人という結晶を完成させる時期です。
「金」に対応する臓器は「肺」と「大腸」です。どちらも排泄に関わる臓器です。
呼吸は吐くことで新鮮な空気が入ってきます。それを通して全身に酸素が運ばれます。大腸は不要なものを排泄するための働きをします。
不要なもの、余分なもの、栄養のないものを排泄することで、エッセンスを凝縮し、自分自身を完成させることがこの期間のテーマです。
坤は上から陰・陰・陰の卦(☷)です。これは地を象徴する卦です。大地がすべてを包みこみ養うことをあらわしています。
この時期の卦は「坤」という完全な陰の卦です。象意は「弱い」「低い」「柔らかい」「受け身」という女性性を象徴するような内容です。
まさに「外柔」です。
この時期は暑い天気とは裏腹に、自分自身を育んでくれている大地に思いをいたすタイミングかもしれません。
結論「処暑」の時期を成長に活かすためのポイント
1 めっちゃ注意深く現実を観察する
2 言葉と感情の表現力に磨きをかける
3 実務能力をとことん発揮する
それでは、それぞれのポイントについて解説していきます。
ポイント1 めっちゃ注意深く現実を観察する
処暑の時期は、観察力と注意力を高めるときです。
判断の軸を自分の思いや衝動ではなく外に移してみましょう。
まずは外にある対象を注意深く観察してみます。人であれモノであれ、細かく具体的にその対象がどういうものなのかを観察してみることです。
これを継続すると、自分のなかに判断の基準が見つけられず、自分の考えが弱まっていく感覚が生じると思います。そして、同時に、公共的な基準、常識や良識と呼ばれるものを頼りにしようとする気分が生じます。
これがいま必要な経験です。全体的な視点は失われるかもしれません。自分で判断できずに気弱になるかもしれません。しかし、その代わりに注意力と観察力を獲得することができます。
ポイント2 言葉と感情の表現力に磨きをかける
処暑の時期は、節度をもって表現手段を広げるときです。
「この想いを表現するのにどういう言葉をチョイスしようか」
「こうした感情を高ぶらせるためにはどんな方法があるか」
「この感情はどんな言葉で表現できるだろう」
こうした試行錯誤によって多彩な表現方法を身につけるときです。これは注意力と観察力を知性や感情に応用してみるということです。
ポイント3 実務能力をとことん発揮する
処暑の時期は、知的な集中力で実務面で成果を出すときです。
事務処理、研究、家事全般、文筆等々、ジャンルはなんであれ、実際的な活動に活力を集中して、実務面での成果を目指す時です。
まわりに一目置かれるぐらいの実務面での強みを作りましょう。ここでの実務能力とは、曖昧なものを排除し、不要なものは捨てて、あるべきものを残し、望んだものを具体的に形にすることです。
その一歩目は整理整頓です。この時期は、大胆に断捨離をして、より純粋な状態を目指すことが大切です。
おまけ
以上、処暑についての考察でした。