哲学

【哲学者入門】相対主義の祖である《プロタゴラス》の思想 │ 「人間は万物の尺度である」

プロタゴラスについてまとめてみました。

● B.C.485〜B.C.410

● 自らを知者(ソフィスト)であると名乗った

● 人間が万物の尺度である、と相対主義を説いた

● プラトンに詭弁家であると批判された

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プロタゴラスとは何者か

プロタゴラスは、古代ギリシアのアテネで活躍した哲学者です。当時は最も知名度が高く、彼の講義には政治家をはじめとする大勢の人々が殺到したといいます。

彼は最初のソフィストとも呼ばれます。ソフィストとは「知者」という意味です。当時のアテネは(奴隷は別として)民主主義の政治が行われており、弁論によって政敵を打ち負かしたり、弁論によって民衆の支持を得るために、弁論術を学ぼうとする人々がいました。

プロタゴラスは自らを「ソフィスト(知者)」「徳の教師」であると名乗り、弁論を学びたいという人々に授業を行なっていました。

 

相対主義の祖

プロタゴラスの有名な言葉があります。

人間は万物の尺度である

これは「絶対的な認識がない」=「相対的である」という相対主義の考え方です。

例えば、寒い暑い、美しい醜いというのも人によって判断が違います。右と左というのも立ち位置によって変化します。このようにすべては相対的です。「これ」が「絶対」に正しいという真理はない、というのが相対主義の考え方です。

実際、現実世界を観察すれば、この相対性は事実としてそこにあります。そこでは、万人に共通の価値というものは存在しないのかもしれません。

プロタゴラスが説いたのは、人間の感覚するところのものが、存在の価値判断の尺度となっているということです。それは言い換えれば、普遍的な判断基準がないということでもあります。

 

相対主義の弊害?

この相対主義がやがてはソフィストをして詭弁家と評する源となりました。

もちろん相対主義自体は、ただの事実であり、現実認識ですから、そこに問題はありません。しかし、ソフィストたちは、この相対主義を利用して、多くの人がひどいと思う主張であっても、あたかも素晴らしい主張であるかのように見せかける話し方を教えるようになりました

特に、議論において相手を打ち負かすため、政治において政敵に勝つためなどに、この弁論術がもちいられました。そこでは相手の主張を別の視点から捉え直して貶し、自らの主張を一見美しくパッケージして語ることが良しとされました。

このような弁論術を学ぶために多くの政治家がプロタゴラスの授業を受けようとしました。

プロタゴラスをはじめとするソフィストたちが教えたのは、例えば政治家にとっては、私利私欲を満たすための政策であっても、あたかも民衆のための政策であるかのように語ることができるスキルです。後にプラトンはソフィストたちを詭弁を弄ぶ者たちであると批判しました

 

現代における相対主義

とはいえ、相対主義自体はとても重要な考え方です。

文化、民族、国家、宗教、科学、どれをとっても相対主義を抜きに考えることはできません。これだけが正しい、これが絶対である、と考えた途端、独善とイデオロギーに陥ってしまうことになります。この多様な世界において、絶対主義で語ることの弊害は数えきれません。

この意味では古代ギリシアにおいてソフィストが語ったことは現代においてもなお価値があるということができると思います。

しかし、ソフィストたちの相対主義は「一切は相対的であるから、自分に都合のよいように現実を解釈して、相手に損をさせ自分が利益を得てもOK」であり、現代におけるような「多様性を多様性のまま良しとして受け入れていこう」という意味での相対主義ではありませんでした。

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