一年間を24に等分して、それぞれに季節の名前をつけたものを「二十四節気」といいます。二十四節気の11番目の季節が「小暑」です。
ネット上に、二十四節気について記したサイトはあふれていますが、その深い意味を分析したサイトは見当たりませんでした。
そこで、このサイトの二十四節気の記事では、西洋占星学・十二支・陰陽五行・八卦などの視点から分析し、二十四節気を成長に活かすための方法についての考察を記しています。
1 共同体での自然なポジションを見つける
2 自分にとって理想的なコミュニティを追求する
3 共同体の安らぎと閉鎖性の間で葛藤する
ざっくり知りたい方のための一般的な「小暑」の意味・行事・食物など
2019年の小暑はいつ?
2019年の小暑は、7月7日(日)から7月22日(月)です。
小暑の一般的な意味とは?
大暑来れる前なればなり(こよみ便覧)
小暑は梅雨があけて本格的な夏の暑さが近づく頃です。でも、小暑のあとにはさらに暑い大署が待っています。小暑から立秋までが暑中見舞いの時期となっています。
7月7日には七夕があります。ベガ(織姫)とアルタイル(彦星)の物語に心をはせる日です。
梅雨の雨が弱まる頃、蝉の鳴き声が響き始めます。
この頃の旬の野菜はゴーヤです。暑さが強くなるにつれてゴーヤチャンプルが食べたくなる人も多いのではないでしょうか。小暑の終わりには土用入りがあります。うなぎの蒲焼の匂いに誘われる時期です。
小暑の初候・次候・末候は?
ひとつの節気を約5日ずつ3つにわけたものを初候・次候・末候と呼びます。二十四節気×3で、これをまとめて七十二候と呼びます。
● 第31候【小暑の初侯】… あつかぜいたる(温風至)
● 第32候【小暑の次候】… はすはじめてひらく(蓮始開)
● 第33候【小暑の末候】… たかすなわちわざをならう(鷹乃学習)
【初候】あつかぜいたる(温風至)
夏の暑さが増してきて、あたたかい風が吹いてくる頃です。
ちょうどこの頃、七夕があります。7月9日・10日には浅草の浅草寺でほおずき市が開かれます。この日に観音菩薩を参拝すると四万八千日分のご利益がある(功徳日)といわれています。
【次候】はすはじめてひらく(蓮始開)
「泥より出でて泥に染まらず」といわれる蓮の花が咲き始める頃です。蓮は古来より東西で神聖さのシンボルとして重用されてきました。
【末候】たかすなわちわざをならう(鷹乃学習)
鷹が巣立ちの準備をする頃です。飛び方を覚え、獲物の狩り方を学び、独り立ちできるように準備します。この時期(7月20日頃)土用入りします。土用の時期の丑の日が「土用の丑の日」です。
映像で感じる小暑
二十四節気を成長に活かすために、ちょっと深く「小暑」を考察してみます
次に、二十四節気を成長に活かすために、「小暑」の意味を深く考察してみます。
1. 西洋占星学から深める「小暑(蟹座の後半)」の意味とは?
小暑は、十二星座の「蟹座の後半」に対応しています。
蟹座は家庭の星座と呼ばれるように、身近な集団への帰属がテーマとなる星座です。
双子座の後半で、個人主義はピークを迎えました。次の成長のステップは、親しみをもって関われる社会との関係を深め、社会性や集団からの影響を受け入れる段階です。
蟹座の甲羅は、閉じられた集団を意味しています。
双子座では「自分」と「他者」という二面性が大切でしたが、蟹座では、この自分と他者が大きな集団のもとで一括りにされます。そこでは、集団の中に個人や個性が吸収されてしまうため、母親に包まれているような安心感と安定を覚えますが、同時に、個の主張や意思が抑圧されるような葛藤もあります。
甲羅の内側では同じ価値観や感情が共有されています。それはまるで母親の胎内のようです。そのため蟹座は母性の星座とも呼ばれます。双子座の知性の発達とは違い、蟹座では感情や情緒の成長に重きがおかれます。
蟹座の前半では、個の主張や意思を集団に適応させるために努力しました。個人主義の限界を突破し、情緒や感情についての経験や学びが深まり、集団や社会というものへの価値に気づきました。
蟹座の後半では、すでに家系や地域という社会集団のなかに溶け込んでいます。
その集団のなかでの自分の拠り所となる仕事や役割を確立し、自身が帰属する共同体をより良いものにすることを夢見て行動していきます。そのなかで共同体のポジティブな面もネガティブな面も両方への理解が深まります。
小暑とは夏の暑さが増してくる時期です。
小暑は「大暑来れる前なればなり」といわれるように「大署」ありきの季節です。大署は獅子座の前半にあたりますが、その前段階が「小暑」=蟹座の後半ということです。
小暑は、共同体の中での自己実現がテーマですが、それは次の獅子座のための準備という側面があります。
というのも蟹座は居心地の良い共同体のなかでくつろぐほうに主眼があり、社会的な肩書きをもって社会貢献に励むことが主たるテーマではないからです。むしろ蟹座は、次の獅子座で個人の創造力を最大限に発揮するための準備期間です。
この意味で大署の前としての「小暑」なわけです。それは、獅子座に向けて内側に熱をたぎらせていく時期です。
(1)自分の共同体のなかでの役割をつくり
(2)その共同体をより良くすることを願い
(3)共同体のポジティブ面・ネガティブ面を学ぶ
2. サビアン占星術から深める「小暑(蟹座16〜30度)」の意味とは?
ここではサビアン占星術における5度ごとの意味から小暑を考察してみます。
サビアン占星術では、各星座が30度にわけられており、その5度ごとにテーマがあります。これは二十四節気が約5日ごとにわけられているのに対応しています。
● 蟹座の第四グループ = 小暑の初侯「あつかぜいたる」
● 蟹座の第五グループ = 小暑の次侯「はすはじめてひらく」
● 蟹座の第六グループ = 小暑の末侯「たかすなわちわざをならう」
共同体のなかで自分にあったポジションを見つけることがテーマ
第一グループは小満の初候(あつかぜいたる)に対応しています。
このグループでは、集団のなかで自分の資質にあった仕事や役割を果たすことを求めます。
これは自分の心と実生活のズレをなくすということです。共同体のなかで生きるための自分の立ち位置を定め、自分の心がのびのびと活動できる環境を整えようとします。
理想は、自分の資質にあった役割でありながら、個性を要求されないような役割です。自分ありきではなく集団ありきの役割です。身近な誰かを助けたり、個性的ではないことをする役回りです。
小暑の初候は「あつかぜいたる」です。
あつかぜは「暑風」でも「熱風」でもなく「温風」と書きます。
蟹座の熱はまさに「温」です。
それは燃えるような熱ではなく、ぬくもりを感じるあたたかい熱です。
身近な共同体のなかで自分にできる役割を見つけることで、集団の温もりと共にあり続けることができます。そこでは同じ共同体に属する人たちと温かい気持ちでつながりながら活動することができます。
小さくて新しい共同体をつくることがテーマ
第二グループは小暑の次候(はすはじめてひらく)に対応しています。
前のグループにおいては、すでにある共同体における役割を見つけることが重要でした。第二グループでは、より理想的な共同体を求めて、実際にそれを築こうと模索します。
蟹座は純粋で理想的な共同体を求めています。この第二グループでは、同じ気持ちをもった共感できる人たちとのつながりを重視して、既成の集団では実現できないコミュニティを具体的に追求します。
第一グループでは、既存の集団での役割をまっとうすることがテーマでしたが、第二グループでは、この集団に迎合するのではなく、あるべき共同体像を求めて工夫することが重要になります。
小暑の次候は「はすはじめてひらく」です。
蓮の花は清らかさと神聖な理想のシンボルです。純粋な共同体を素直に追求する第二グループの特徴が象徴されているようです。
第二グループの側から見ると、既存の共同体のありかたは批判の対象となります。そこにある不純や打算や閉鎖性などにうんざりし、その対極にある純粋なコミュニティを思い描くわけです。
これは、泥の中から生じつつも、泥に汚されない蓮のようなコミュニティです。
親しい共同体を飛び出すための準備をすることがテーマ
第三グループは小暑の末候(たかすなわちわざをならう)に対応しています。
第一グループで集団で役目を果たし、第二グループで新しい集団を追求し、第三グループではこれらの共同体から自分を解放するための準備を進めます。
第三グループは、親しく過ごしてきた共同体を飛び出すための最終段階です。親しい仲間との幸福を追求しつつ、その閉鎖性に葛藤し、ここにいたい気持ちと外に出たい気持ちを揺れ動きます。
少数の仲間で贅沢に過ごすこともありますが、同時に、共同体からの脱出願望を抱えています。共同体の功罪を理解するにつれて、自らの個性を解放したい気持ちが高まっていきます。
小暑の末候は「たかすなわちわざをならう」です。
鷹は高貴な鳥です。ですが、まだいまは、親鳥という共同体のなかで、飛び方や狩り方を学び修めるステップです。独立自尊の生き方に飛び出すための前段階です。
これはそのまま第三グループの姿と重なります。
初候 自分にぴったりの役割を共同体のなかで模索します
次候 新しくて理想的な共同体づくりに精を出します
末候 共同体を守る気持ちから脱出する気持ちへと移行します
3. 十二支・陰陽五行・八卦から深める「小暑」の意味とは?
小暑に対応する十二支、陰陽五行、八卦はこちらです。
● 十二支・・・「未」
● 陰陽五行・・「土(ど)」
● 八卦・・・・「坤(こん)」
未(羊)は、植物が生い茂って暗く覆うことを意味しています。
未は蟹座の後半と獅子座の前半に対応しています。
「未」という漢字には2つの解釈があります。一つ目は「眛」で「鬱蒼と茂って暗く覆う」という意味があり、二つ目は「味」で「果実が熟した状態」という意味があるといわれています。ここからは何かひとつのものがピークを迎えた状態をイメージできます。
また「未」という漢字には「未来」「未成年」「未熟」など「いまだ〜ない」という意味があります。ここには未来に向けた可能性や成長を示唆するイメージがあります。
これらは、蟹座の後半でピークを迎える集団への帰属と、個人の創造性を開花させる獅子座の段階を象徴しています。
「土」は生命を守り育むエネルギーを象徴しています。
「土」は季節の変わり目に配置されています。小暑と大署は夏から秋への季節の変わり目です。星座では蟹座の後半と獅子座の前半の期間に対応しています。
「土」は、その言葉通り、すべてを産み育む大地を象徴しています。それは私たちがよって立つ大地であり、所属する共同体であり、集合無意識でもあります。
私たちは(良くも悪くも)「土」に象徴されるものから無意識に影響を受けています。私たちは自分が帰属する共同体や過去の行いの負債を抱えていますし、逆に、共同体のおかげで自分を超えた何かに奉仕しようという思いが呼び起こされます。
「土」に対応する臓器は「脾臓」「膵臓」「胃」「口」です。食べ物を摂取し、溶かして同化できるようにします。影でからだを支える働きが「土」に象徴されています。
坤は上から陰・陰・陰の卦(☷)です。これは地を象徴する卦です。大地がすべてを包みこみ養うことをあらわしています。
小暑と大署は一年でもっとも暑い時期です。
しかし、この時期の卦は「坤」という完全な陰の卦です。象意は「弱い」「低い」「柔らかい」「受け身」という女性性を象徴するような内容です。
まさに「外柔」です。
この時期は暑い天気とは裏腹に、自分自身を育んでくれている大地に思いをいたすタイミングかもしれません。これは、一年でもっとも大地が温められる時期=大地がもっとも注目される時期ということでしょうか。
結論「小暑」の時期を成長に活かすためのポイント
1 共同体での自然なポジションを見つける
2 自分にとって理想的なコミュニティを追求する
3 共同体の安らぎと閉鎖性の間で葛藤する
それでは、それぞれのポイントについて解説していきます。
ポイント1 共同体での自然なポジションを見つける
小暑の時期は、自分が属しているコニュニティにおける自分らしいポジションを見つけて、その役割に徹するときです。
自分が安心して果たすことができる役目は何でしょうか。
簡単には見つからないかもしれませんが、いまはそれを見つけるときです。知り合いの話し相手とか、家族のなかでの道化役とか、ちょっとした役割でOKです。
自分の身の丈にあった役割を果たすことを通して、共同体の一部である喜び、身近な誰かの役に立つ喜びを経験できます。
自己表現は必要ありません。ただただ相手が喜んでくれるようなことを積極的に行動するのみです。私たちは、このような経験を通して、自分と共同体が互いの一部であることを実感します。
ポイント2 自分にとって理想的なコミュニティを追求する
小暑の時期は、自分が生まれ落ちた共同体ではなく、自分のハートがときめく理想の共同体を求めるときです。
自分自身にとっての理想のコミュニティのあり方とはどんなものでしょうか。
ここで追求されるコミュニティは、少なくとも打算や駆け引きや建前がなく、お互いに心が通じ合い、助け合い、愛しあうコミュニティです。小暑は、このように現実にはなかなか存在しないユートピア的な共同体を求めるときです。
私たちは家族や地域社会などの共同体以外のコミュニティを求め続けています。
サークル活動、仲の良い知人のあつまり、宗教的な活動、◯◯クラブなど、すべてがコミュニティです。そのように私たちが新しく参加するコミュニティには、私たちが求める理想のコミュニティ像が投影されています。
小暑は、小さくても新しい共同体を追求するときです。
ポイント3 共同体の安らぎと閉鎖性の間で葛藤する
小暑の時期は、コミュニティの良い面とネガティブな面の両方を理解するときです。
大地たる母は子どもを産み育てます。しかし、いつまでも子どもを保護し続けることは子どもの自立を阻みます。
同じように、どのような共同体も私たちを守り育ててくれるものです。しかし、そこにはネガティブな側面もあります。
まず、共同体にひたって幸せな状態はいつまでも続きません。内輪もめ、対立する意見、他の共同体とのせめぎ合いなど、共同体を不安定にさせる要素が常に発生してきます。
次に、共同体に浸り続けることは私たちの独自性を抑圧することにつながります。親や世間の常識に従うだけでは、個としての自立は達成されません。
小暑は、このように共同体のポジティブな面とネガティブな面の両方を深く理解するときです。
おまけ
以上、小暑についての考察でした。