この記事は、とある学習塾がWebサイトを改善してMEO対策をしたことで、サイトからの新規問合せが10倍になった事例についてのまとめです。
ちなみにこれらの対策はWebコンサルタントや学習塾コンサルタントなどに外注はしていません。個人的に「改善の余地あり」と判断して社長に実行許可をもらって改善した結果です。
改善して速攻で問合せが倍増しました。あまりに予想以上の成果につながったので「まぐれかな」と思っていたのですが、その後も継続して昨年のサイト問合せ数を大幅に上回り続けているので、効果はあったのだと感じています。
このレベルの改善は、各学習塾の校舎単位で実行できるレベルのアクションだと思います。アクセス解析など若干専門的な内容も入っていますが、このくらいはできないと時流に置いていかれると思いますし、知っておくことにメリットしかない内容です。
目次
去年はたった3件の問合せが、今年は35件になった
問合せ数のビフォー・アフターの全容です
まずはビフォー・アフターを具体的に見ていきます。
問合せ数:昨年3件 → 今年35件
ここでの問合せ数とは、純粋にWebサイトの申込フォームからお問合せがあった件数です。お問合せとは、資料請求や体験授業の申込のことです。
この成果を販促費を一切かけずに実現できました。
何をどのようにしたのかについて、この記事でご紹介していきます。ITリテラシーが0という場合は実行が難しいでしょうが、パソコンやスマホを操作できるレベルの能力があれば、少しの学習と努力で自力で実行できる内容だと思います。
大手の資料請求サイトの問合せはコスパが悪い
と、その前に、補足情報をお伝えしておきます。
実は昨年は純粋なWebサイト問合せは3件でしたが、それ以外のWeb問合せが32件もありました。それは何かといいますと「資料請求サイト」からの問合せです。
学習塾の仕事に携わっている方はご存知だと思いますが、販促施策のひとつに資料請求サイトに掲載するという方法があります。特に大手の資料請求サイトはSEO的にも非常に強く、広告もバンバン打っているので、そこに掲載することで自塾のネット上での露出は多くなります。
そして、必然的に資料請求の数も増えます。
資料請求サイトに掲載することのデメリットは2つです。
- コストが高い
- 成約率が低い
某サイトでは1件の資料請求につき5000円が請求されます。しかも複数の塾の資料を大量に取り寄せる方々もいるので、必然的に自塾への熱量は低いリストが集まってきます。
そうするといくらスキルのある教室長だとしても成約率は落ちてしまいます。20名ほどの教室長の数値から計算すると大手の資料請求サイト経由の問合せの成約率は12%程度でした。
通常の問合せの成約率は、普通の教室長だと80%ぐらいはいくでしょう。経験が浅かったり能力が低い教室長でも60%ぐらいはいくでしょうし、スキルのある教室長は100%というケースもあります。
そう考えると12%という成約率がめっちゃ低いことがわかると思います。
この原因は「リスト自体がホットではない」ということです。
さらにはコストです。例えば成約率12%で5名獲得するためには42件の問合せが必要になります。1件5000円で計算すると、42件×5000円=210,000円です。21万円かけて5名獲得です。一人当たりの獲得単価は4万2千円です。
もちろん折込チラシの販促コスパと比較すると、まぁ、これでも良いかなと思う方もいるでしょうが、私は非常にもったいないなと感じてしまいます。
理由はもっとコスパよく集客する方法があるからです。
例えば、私が学習塾業界にはいって1年目に実行した紹介施策は、コスト20万円で20名を集客できました。期間は一ヶ月半です。成約率がほぼ100%だったので、一人当たりの獲得単価は1万円です。
自社サイトで大手の資料請求サイトに勝つことにチャレンジした
実は、Webサイトの最適化とGoogleマイビジネスのMEO対策に取り組む前は、私の働いている学習塾も資料請求サイトと契約をしていました。しかし、あまりのコスパの悪さに取引をやめて、次に集客のための一手として何をしようかと考えました。
そこでまず最初に手をつけたのが、今回のWebサイトの最適化とMEO対策でした。
私は「自社の取り組みで大手の資料請求サイトの成果を超えてやる!」と意気込んで、今回ご紹介する取り組みに着手しました。
ステップ1 Googleマイビジネスを整備してみた
とにかく基本情報を正確に入力するのが大切です
最初に取り組んだのはGoogleマイビジネスでした。
といっても何か特別なことをしたわけではありません。まずは必要最低限の項目を記載しただけです。逆にいうと、それまできちんとすべての項目を整備していなかったということですが、私が独自に調べまくったところ、Googleマイビジネスの情報をきちんと記載しきっている学習塾のほうが少なかったです(2019年調査)。
Googleマイビジネスでまず何をしたら良いかについては次の記事を参考にしてください。
この段階で実行したのは「基本情報」を正確に入力する、というアクションです。
Googleマイビジネスの管理ページの「情報」という項目にある以下の項目の状態を確認し、不足しているところや修正が必要な箇所を整備しました。
注意すべき点は、ビジネス名やビジネス拠点がウェブサイトに掲載されている記載と一致しているかどうかです。
また、これらの項目の修正希望を出してもすぐに反映されません。一度、Googleのチェックが入り、修正が妥当だとGoogleに判断された時点で反映されるかたちになります。
Google検索やGoogleマップでどう表示されているかを確認する
次に、必ずしておくべきことは、実際のGoogleマップやGoogle検索でどのように表示されているかを確認するということです。
マイビジネスがどう表示されているかは、Googleマイビジネスの管理ページの「ホーム」の以下の箇所からリンクで確認できます。
何故、検索画面から確認が必要かというと、(1)不足している情報(入力モレ)を発見しやすい、(2)顧客目線で表示を確認することができる、ということです。これは社会人なら当たり前の確認作業レベルの業務です。ですが、Web関係に苦手意識をもっている方がおろそかにしやすい作業でもあります。
また、上記のリンクからだけではなく、Google検索で自分で検索してみたときにどう表示されているかも確認しましょう。そうすることで、Googleマップで何番目に表示されているか(検索順位)が確認できます。また近隣競合の学習塾で広告を出しているのはどこの学習塾なのか、とか、検索順位が上位なのはどの学習塾なのか、という現状を確認することができます。
さらに、Googleマップでビジネス拠点が2つ登録されている異常ケースが見つかる場合などがあります。こうしたケースは直接Googleに報告して修正してもらいましょう。
ステップ2 Webサイトの導線を整えてみた
Googleアナリティクスを導入する
さて次のステップです。このステップ2と次のステップ3が核心的なアクションになります。
Webサイトを改善するにあたって、まずは現状分析が必要です。現状分析に使うツールはGoogleアナリティクスです。GoogleアナリティクスはGoogleが提供している無料で使えるアクセス解析ツールです。
もし、GoogleアナリティクスをWebサイトに埋め込んでいない場合は早急に設定して、一ヶ月間お待ちください。
アクセス解析からユーザーの導線を分析した
次に、Googleアナリティクスを分析しました。
分析の目的はユーザーのサイト内の導線を調べることです。分析する期間については、Googleアナリティクスを設定してから現在までの全期間に設定しました。
ユーザーの導線を分析するために、実際は色々な視点で細かく分析したのですが、特に重要なのは次の2つの項目です。
- 行動 > サイトコンテンツ > すべてのページ
- 行動 > 行動フロー
この2つの項目を分析することで「どのページが閲覧されているのか」と「どのページの次にどのページが閲覧されているのか」が見えてきます。
私が分析した時にPV数が多かったのは次のページでした。
- トップページ
- コースや料金が記載されているページ
- 各校舎の紹介ページ
ユーザーの行動フローとしても、トップページからコース&料金を確認しにいって、近隣校舎ページへ飛んでいる様子が伺えました。
ユーザーが見たいページに飛びやすいように導線を整えてみた
ここまでの分析を踏まえて、次のような導線目標を考えました。
トップページ・コース紹介ページ・校舎紹介ページをストレスなく行き来できる導線をつくる
至極、当たり前のことなのですが、Googleアナリティクスの数値分析があったからこそ、実際のユーザーの行動をふまえた改善方針を立てることができました。
この目標のためにとったアクションは次の3つです。
- トップメニューの項目を変更した
- 近隣校舎を探しやすくした
- コース紹介ページを学年別にした
- 各ページに相互リンクを貼った
まず、トップメニュー項目をアクセス数が上位のページに入れ替えました。「コース紹介」と「近隣校舎」です。修正前は「教育理念」や「教育方針」などの企業目線で、かつ、お客さんの多数が求めていないページがメニュー項目に含まれていましたが、これはメニューから削除してフッターなどに移動させました。
次に、近隣校舎を探しやすくしました。修正前は各ページ下部に各校舎へのリンクを貼っている状態だったのですが、校舎一覧ページを新設し、メニューからそのページへ飛べるようにしました。
その次に、コース紹介ページを学年ごとに分けました。修正前は小中高のコースが1ページに記載されているかたちだったのですが、コース紹介の代表ページを作成し、小中高コースそれぞれに新たにページを作成しました。
これはアクセス解析の視点からも必要な措置です。ページを分けることで、どの学年のページが閲覧されているかを分析することができるようになるからです。
最後に、各ページ間に内部リンクを張り巡らせました。メニューだけではなく、ページ途中でも他のページに飛べるように、適宜、内部リンクを張り巡らせました。
ステップ3 Webサイトの問合せページを改善してみた
ということが目標でしたので、そのために絶対に必要なページがありました。
それが「資料請求ページ」です。
というわけで、お問合せに関するページ構成を改善してみました。
問合せページの改善ポイント
- ビフォー:お問合せページ
- アフター:お問合せページ・資料請求ページ
具体的にどんな改善をしたかを解説します。
まず「お問合せページ」の問合せ項目に、「説明会」「体験授業」「質問相談」の3項目を設けました。
次に「資料請求ページ」を新設しました。こちらは問合せのハードルをさげるために、電話番号やメールアドレスは必須とせず、資料請求していただくことだけにフォーカスさせました。
「連絡先が記載されていないと資料請求後に営業がかけられないのでは?」という疑問もあるでしょうが、そこは重要視しませんでした。というのも、当該学習塾のサイトを訪れて資料請求してくださっている方なので、大手の資料請求サイトよりも数倍ホットな見込み顧客であることに間違いないからです。実際、成約率も飛躍的に高まっています。
問合せに関するページをトップメニューに表示させた
こうして改善したページ(お問合せ・資料請求)をトップメニューに表示させました。
以前のトップメニューは項目が7個ほどありごちゃごちゃしていたため、改善後は5個にしぼり、そのうち2つが問合せに関するページのかたちに変更しました。
こうすることでユーザーの導線をつくることを意図しました。
ちょっとした余談
問合せページを修正する際に「法人問合せページ」も新しく作りました。
以前の問合せページには、法人からの営業関係の問合せが飛んでくることがしばしばでした。「あ、問合せが来た!」と喜んでメールを開いたら「なんだ営業かよ。。。」というケースが多発していたわけです。
法人問合せの窓口ページを作ることで上記のケースを防げるのではないかと考えました。
結果的に8割ぐらいの法人営業の問合せは「法人窓口」から来るようになりました。
ステップ4 Webサイトに簡単なSEO対策をほどこしてみた
さて次のステップです。
実は今回改善しているWebサイトは個人事業者に発注して作ってもらったサイトだったので、制作費用のコスパはいいのですが、マーケティングという視点では対策がほぼ皆無という状態でした。
そこで最低限のSEO対策をほどこすことにしました。
- 使用したツール:「All in One SEO Pack」というプラグイン
- やったこと:「SEOタイトル」と「SEOディスクリプション」の設定
ちなみに「タイトル」と「ディスクリプション」とは次の箇所を意味しています。
当該WebサイトはWordPressで作成していたので、プラグインを活用することにしました。使ったのは「All in One SEO Pack」というプラグインです。
このプラグインを使って、各ページのタイトルとディスクリプションを修正しました。
例えば校舎紹介ページだと、タイトルは「栃木山田校」という校舎名のみでした(校舎名の例は適当な名前です)。そしてディスクリプションはまったく設定されていませんでした。タイトルはSEOに直接関係します。ディスクリプションはSEOには影響しませんが検索結果で表示された時のクリック率に関係してきます。
改善後の校舎紹介ページのタイトルは「池田市山田の学習塾【英才学習塾 栃木山田校】集団授業」というように「地域名+塾名+校舎名+特徴」を入れて作成しました。
ディスクリプションは顧客のベネフィットをいれた説明文を記載しました。
ステップ5 Googleマイビジネスを活用してみた
ステップ1でGoogleマイビジネスを整備しました。今回はその続きです。具体的なアクションとしては次の通りです。
- 写真を10枚以上掲載する
- 投稿をする
- クチコミを集める
写真を10枚以上掲載した
写真を掲載することでGoogleマイビジネスの「アクティビティ数」が増加します。
せっかく検索で自社のGoogleマイビジネスが表示されたとしても、ストリートビューの写真が表示されている状態では写真を見ようとはならないですよね。
どんな写真を載せるべきかは次の記事を参考にしてください。
投稿をのせた
投稿を載せることで、まず、Googleマイビジネスが稼働しているというメッセージを発信することができます。そして、自社の情報をさらに伝えることができます。
今回のケースですと「資料請求」に関する投稿をすることで、そこからサイトへのアクセスがあり、問合せにつながりました。
投稿に使う画像はCanvaというサイトで作成しました。
クチコミを集めた
次に生徒と保護者にクチコミをお願いしました。
Googleの規約によると対価をわたしてクチコミしてもらうのは違反になります。違反が見つかるとGoogleマイビジネスが削除されるという事態につながります。
今回は顧客ロイヤリティが高そうな生徒や保護者にGoogleマイビジネスにクチコミしてもらいたい旨を直接依頼をしました。
ありがたいことに実際にクチコミしていただきました。
学習塾のGoogleマイビジネスを大量に調査したところ、クチコミされている学習塾は皆無でした。ここから「今からクチコミを集めることで先行者利益を得られるのではないか」と考えました。というのも、Webマーケティングの常識から考えて、クチコミがMEOに影響を与えているであろうと推測できるからです。
ステップ6 あとは放置してただ待つのみ
- ステップ1 Googleマイビジネスを整備してみた
- ステップ2 Webサイトの導線を整えてみた
- ステップ3 Webサイトの問合せページを改善してみた
- ステップ4 Webサイトに簡単なSEO対策をほどこしてみた
- ステップ5 Googleマイビジネスを活用してみた
ここまでやったら、あとは待つのみです。
嬉しいことにこれらの整備をしてすぐに3日連続で問合せが発生しました。
「偶然かな」と思ったのですが、その後もコンスタントに問合せが発生し、結果的に改善後の初月は35件の問合せとなりました。
おかげさまで翌月以降も昨年対比を上回り続けています。
ステップ7 結果分析 – 何故こんなに成果がでたのか –
結果がでて喜んでいるだけではビジネスではありません。というわけで「何故成果が出たのか」を簡単に分析してみました。
分析した結果、特にポイントだったのは次の点でした。
改善前がしょぼすぎた。。。
ふざけているわけではありません。これってとても重要なことだと思います。要は「まだ改善できるところはないか?」と考え続けることが、継続的な改善につながるからです。
いまが完成系ではなく、発展途上ととらえることで改善点はどんどん見つかります。
実際、今回ご紹介した改善のあとも、校舎紹介ページの構成を変えたり、文言を修正したり、写真をカスタマイズしたり、送付資料にいれる販促物を見直したりと微修正を繰り返しています。
まったく成果につながらないこともありますが、行動し続けることで新たな可能性が見つかることが多々あります。
ちょっと真面目な分析結果
内部要因は次の点です。
- サイト内で求めるページにスムーズに移動できるようになったこと
- 問合せページへのリンクの視認性が高まったこと
- Googleマイビジネスでのアクティビティ数を高めることができたこと
- 資料請求というハードルの低い問合せルートができたこと
外部要因は次の点です。
- ちょうど学習塾を探すニーズが高まる時期と重なったこと
この結果が出たのは7月のことでした。7月は「定期テスト結果が出た後+夏期講習へのニーズが高まる時期」ということで、そのニーズにマッチできたということだと考えました。
その後数ヶ月間の検証結果を見てみても、特に顧客ニーズの高まる月における問合せ数が昨対で大きく伸びました。他の月でも昨年以上の問合せになっていますが、特にニーズが高まる時期の増加率が大きい傾向にあります。
そう考えると、これだけの問合せ数を機会損失し続けてきたということです。
結果的に数値で理解できたGoogleマイビジネスの効果
今回の事例に取り組んでいたとき、GoogleマイビジネスのMEO対策については一般的な情報は流布していましたが、学習塾という業態に特化したMEO対策の情報は皆無でした。
Googleマイビジネスの必要性は十分に理解できるのですが、成果という視点において学習塾ではどんな効果があるのだろうかという疑問が常にありました。
今回の事例での取り組みを通して、その疑問に対する答えのヒントになりそうなポイントが見つかったのでお伝えいたします。
- 写真の閲覧数とサイトへのアクセス数には相関関係がある
- サイトへのアクセス数と問合せ数には相関関係がある
まとめ
いかがでしたでしょうか。
もう一度ステップをおさらいしてみます。
- ステップ1 Googleマイビジネスを整備してみた
- ステップ2 Webサイトの導線を整えてみた
- ステップ3 Webサイトの問合せページを改善してみた
- ステップ4 Webサイトに簡単なSEO対策をほどこしてみた
- ステップ5 Googleマイビジネスを活用してみた
学習塾は地域密着型のビジネスです。
顧客が学習塾を選ぶための2大条件が「自宅からの距離」と「授業料」です。
Googleも2019年からGoogleマイビジネスに本格的に力を入れ始めています。自塾の地域におけるネット検索で上位に表示されることは学習塾のマーケティングにおいて非常に重要です。
今回は触れませんでしたが、リスティング広告もうまく活用するべきだと思います。
とはいえ、まずは無料で取り組んで成果につながるところから着手すべきだと思います。そのためのGoogleマイビジネスですね。