● B.C.460頃〜B.C.370頃
● 笑う哲学者と呼ばれた
● 万物は原子によって構成されているという原子論を唱えた
● 究極的な粒子である原子が、空虚を飛びまわっていると考えた
デモクリトスとは何者か
デモクリトスは、古代ギリシアのトラキア出身の哲学者です。古代オリエントの各地を遍歴し、一説ではインドまで旅をしたといわれています。
快活な性格で「笑う哲学者」と呼ばれました。哲学以外にも、倫理学、数学、天文学、生物学、音楽等々の多方面での学問に通じていたといいます。
ソクラテスより後に出生しましたが、慣例によってソクラテス以前の哲学者に分類されています。
デモクリトスは原子論について語りましたが、その考え方は古代ギリシアにおいて異端的に捉えられていた形跡があり、哲学者プラトンは原子論に関する著作を焚書しようとしたことさえあったといいます。
古代における原子論の語り手
デモクリトスは「原子論」を説いた哲学者です。ただし、原子論の創始者は彼の師であるレオキッポスという哲学者であったと言われています。
原子論とは「万物は原子によって構成されている」と考える存在論の一種です。
当時、パルメニデスという哲学者は「あるものがなくなることはない」と主張しました。例えば、りんごを分割していったとして、どこまでも分割することができるだろうが、それが無になることはありえない、ということです。
しかし、デモクリトスは、延々と分割していけば絶対に分割できない粒子にたどり着くはずであると考えました。これが「原子(アトム)」です。この原子が空虚(空間)の中を飛びまわり、様々に結合したり分離したりすることで諸々の存在者を構成しているのだという存在論が原子論です。
ここでのポイントは原子が浮遊する空間が前提として必要であるということです。デモクリトスはこれを「空虚(ケノン)」と呼びました。哲学者パルメニデス は「ないものはない」と主張しましたが、デモクリトスは「何もない空間がある」として「ないものも、ある」と主張しました。
レウキッポスとその友人デモクリトスは、充実したものと空虚なものがすべての構成要素であると主張し、前者をあるものと呼び、後者をあらぬものと呼んだ。
つまり、これらのうち充実して固いものはあるものであり、空虚なものはあらぬものであると呼び、それらを、あるものたちの質量としての原因であると主張している。
ーーアリストテレス
デモクリトスたちの主張において、原子には感覚的な性質は帰属させられてはいません。
原子は様々な形態をもって、配列されたり、位置をもつことによって、多様な現象が生起していると考えました。原子とその運動だけが真実に存在しており、感覚的な性質、例えば匂い・色・味などは単に習慣的なものに過ぎないと考えました。
近代科学にも通じる唯物論的世界観
デモクリトスは、原子という最小単位の物質によって身体も心も成立していると考えました。また感覚的な性質は真実の存在ではないと考えました。
ここには唯物論的な世界観に通じるものが垣間見えます。
彼自身は倫理学においても道徳的な箴言をたくさん残しており人生の価値を唯物論的に切り捨てていたとは言えないでしょうが、しかし、原子論という存在論は唯物論的な世界観の一種とみなすことができそうです。
また、万物が原子という最小単位の物質によって構成されているという物の見方は近代の自然科学の考え方に通じるものがあります。